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前立腺の症状

前立腺がん

  • 前立腺がんの症状

    前立腺がんは、初期症状はほとんどありませんが、進行すると以下のような症状が顕著になります。

    • 排尿が始まってから出尽くすまでの時間が長い
    • 腫瘍に尿道が圧迫されるので、尿が出にくくなる
    • 排尿の欲求はあるのに、尿が出始めるまでに時間を要する
    • 夜間に頻尿になる傾向が強い
    • 残尿感で何度もトイレに行く
    • 尿の切れが悪くなり、しずくが垂れることが増える
    • 膨満感がある

    上記はある程度進行した状態で現れる症状ですが、さらに進行すると膀胱内の尿を出すことができなくなり、尿閉という状態になることもあります。また、ほかの部位に転移しやすいことも前立腺がんの大きな特徴です。全身の骨に転移すると身体の各所が痛みますし、骨折のリスクも増えます。
    とにかく前立腺がんは初期には自覚症状がないので、発症に気づきにくいことがほとんどです。また、ある程度進行してから出る症状が前立腺肥大症と類似する点が多いので、いずれにしても検査を行うことが重要です。

  • 前立腺がんの原因

    前立腺がんは、男性ホルモンが発症や進行に深くかかわっていることは分析されていますが、現時点では原因の解明には至っていない疾患です。
    進行が遅い特徴を持つがんなので、発症した前立腺がんがあっても症状が出ないまま長く平穏に暮らす例もあります。ただし、前立腺がんの中にも進行が早いタイプも存在するので、進行は遅いと決めつけることなく適切な診療を受けることが重要です。
    前立腺がんはほかの臓器や骨に転移することが多く、全身の骨がもろくなって骨折しやすくなったり、身体の多数の部位に痛みを生じたりすることもあります。
    年齢的には60歳代以降で発見されることが多いですが、近年は50歳代の人が検査を受けた際に発見されることも増えています。

PSA異常

  • PSA異常の症状

    PSAとは、前立腺がんのマーカーとして健康診断などで扱われる数値で、前立腺から分泌されるたんぱく値を示しています。PSAはprostate-specific antigenの略語で、日本語では前立腺特異抗原と記載します。
    PSAは血液検査で確認できる数値で4ng/mLという基準値を超えると注意すべき状態と言われますが、基準値を超えたらすべて前立腺がんというわけでもありません。(若年層ではより低い数値で注意を促すことがあります)
    PSAの確認は人間ドックや健康診断などで行われることが増えています。

  • PSA異常の原因

    PSAが高いときに疑いがある疾患は、前立腺がんのほかにも、前立腺炎や前立腺肥大症などがありますが、この中で注意度が最も高いのは前立腺がんです。そのため、前立腺がんの疑いがあれば、前立腺組織を摂取して病理検査を行うなど、検査診断は前立腺がんに着目して進める必要があります。
    ただし、PSA値の上昇は長時間車を運転した後や射精の後にも見られますし、前立腺で炎症が起こっているときにも表れるので、専門性を持つ医師に診断してもらうことが早期発見・早期治療につながります。

前立腺肥大

  • 前立腺肥大の症状

    前立腺肥大とは、膀胱の下にある前立腺(精液の一部を作るところ)が大きくなる(肥大)ことによって、尿道を圧迫し、排尿障害を起こす病気です。
    症状としては、以下の項目などが挙げられます。

    • トイレが近い(頻尿 昼間8回以上)
    • 排尿をした後でもすっきりしない(残尿感)
    • 排尿をしている時に途中で途切れる(尿線途絶)
    • 尿の勢いが弱い(尿勢低下)
    • 尿が一度に出ない(二段排尿)
    • 急に尿がしたくなって、もれそうで我慢できない(尿意切迫感)
    • 我慢できずに尿をもらすことがある(切迫性尿失禁)
    • 尿が出始めるのに時間がかかる(遷延性排尿困難)
    • お腹に力を入れないと尿が出ない(腹圧性排尿)
    • 夜中に何度もトイレに起きる(夜間頻尿 就寝後1回以上)
  • 前立腺肥大の原因

    前立腺肥大症は50歳代から加齢とともに増加しますが、前立腺がなぜ肥大するのかは、はっきりと解明されていません。
    中高年になってホルモンの環境変化が一因と考えられていますが、最近では、肥満や高血圧、高血糖及び脂質異常症、さらにメタボリック症候群との関係が示唆されています。

  • 当院の治療法

    診断・検査

    排尿に関して、日常生活に支障が出ているようでしたら、早めに泌尿器科を受診することをお勧めします。
    前立腺肥大を疑う場合、まず最初に問診を行います。
    症状と程度を症状スコアなどにより評価し、尿検査、直腸診など診察のあと、血液検査、腹部エコー検査などを行い、尿路感染の有無、前立腺の大きさ、前立腺がんの有無、腎機能などを調べます。
    排尿障害があったからといって、必ずしも前立腺肥大症というわけではありません。他の病気の可能性も含めて検査をすすめます。

  • 治療法

    前立腺肥大と診断された場合の治療方法ですが、大きく分けると「様子観察」、「薬物治療」、「手術治療」、「保存治療」があります。
    前立腺肥大があっても、症状がなければ治療することなく「様子観察」を行います。
    症状が軽ければ、基本的には、まず薬物治療が行われます。
    しかし、前立腺肥大の症状が重度の場合や放置をして悪化している場合、または、前立腺肥大とともに、尿路結石や膀胱結石、肉眼的血尿、尿閉、腎機能障害などの合併症が見られる場合には、手術治療を行います。

  • <薬物治療>

    ▲α1受容体遮断薬
    前立腺肥大は、尿道を圧迫(機械的閉塞)して排尿障害を起こしている状態です。また同時に、排尿時に前立腺や尿道の筋肉が緊張(機能的閉塞)することにより排尿障害を起こしている状態です。排尿時に前立腺や尿道の筋肉をリラックスさせる働きのあるα1受容体遮断薬が排尿障害を改善します。症状が軽い場合は、この薬剤だけで症状が改善します。

  • ▲5α還元酵素阻害薬
    テストステロンから前立腺肥大を引き起こす活性の高いDHT(ジヒドロテストステロン)への変換を抑える薬です。肥大した前立腺腺腫を縮小(小さく)し、排尿障害を改善させます。ただし、服用開始から効果が現れるまでに数か月かかり、服用を中止した場合再び肥大していきます。

  • ▲ホスホジエステラーゼ5阻害薬
    肥大した前立腺肥大症の排尿時に、尿道・前立腺・膀胱頸部の緊張をリラックスさせることにより、排尿症状を改善させます。

  • ▲植物製剤、漢方薬
    植物製剤、漢方薬の中には、排尿障害に効果を発揮するものがいくつかあります。

  • <手術治療>

    ▲経尿道的前立腺切除術(TUR-P)
    薬物治療を行っても充分な効果が現れない場合や症状がひどい場合には、尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺腺腫を電気メスによって切除します。

  • ▲ホルミウムレーザー前立腺核出術(HoLEP)
    尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺腺腫を外科的被膜に沿って核出(肥大した腺腫のみ取り出す)します。

  • ▲光選択的前立腺蒸散術(PVP)
    尿道から内視鏡を入れて肥大した前立腺腺腫をレーザーにより蒸散(蒸発拡散)させます。

  • ▲開腹手術
    前立腺がとても大きくなっている場合には、前立腺を全て摘出するために開腹手術をして前立腺を取り除きます。

  • ▲尿道ステント
    ステントという筒状のものを前立腺が大きくなり圧迫している尿道に留置する方法です。手術は容易で、安全性も高いですが、尿路感染症など合併症あり、限られた方を対象に行います。

    • 寝たきり状態
    • 全身の状態が悪い
    • 手術が困難な場合
  • <保存治療>

    保存治療としては、生活習慣を改善するために生活指導を行います。食生活や運動を改善することによって、排尿障害の改善を期待します。
    例えば、長時間座っていること、長時間身体を冷やす(長時間の水泳など)、アルコールの大量摂取、過剰な水分摂取などを控えます。
    また、適度な運動と食生活の改善により治療を行います。